深澤先生のブログ「Hand of god #4」

2017年07月12日(水)

<深澤英之 先生>
城西大学野球部、女子駅伝部、陸上部トレーナー
ヤクルトスワローズ(現 東京ヤクルトスワローズ)一軍トレーナー兼リハビリ担当
ヤクルトスワローズ(現 東京ヤクルトスワローズ)二軍トレーナー、二軍トレーニングコーチ
ヤクルトスワローズ(現 東京ヤクルトスワローズ)一軍トレーナー兼リハビリ担当
ロサンゼルスドジャースアシスタントトレーナー
株式会社ルートヴィガー設立(広尾店、銀座店)
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今年のプロ野球は、大味な展開になっているような気もしますが、シーズン中盤とは言え今シーズンに備えて準備を徹底してきたか?どうか?ということが結果として表れているように感じます。

プロのレベルになると、ほとんどの選手の能力は紙一重です。だって野球が上手い人たちが集まっているわけですから、実際はどのチームも同じようなレベルにいるわけです。
それでも結果に差が生まれるのは「準備」ができていたか?できていないか?ということだと、私なりにプロ野球やメジャーリーグの現場を経験してきて強く思うことです。

どんなに上手な人でも準備を怠れば結果は出ません。なぜなら、同じレベルでしのぎを削っているわけですし、お互いに「勝ちたい」思いをぶつけているわけですから、当然努力してきた人に軍配は上がります。

しかも野球は1対1の戦いではなく、団体で戦うスポーツです。努力してきた人の数が多い方が勝者になるのです。
もちろん百何十試合戦えば、努力の足りないチームでも勝つことはありますが、私が言いたいのはトータル的にみて結果が出るかどうか?ということです。

そういう観点から見て、今年のシーズンはその「準備」の差が歴然とでているように見えるのです。
細かく言うと監督・コーチ・選手だけでなく、球団全体も含めての話になってしまうので、ここではそこは割愛させていただきます。

私たち東洋医学の世界でも、一般的な社会においても同様のことが言えると思います。とにかく良い仕事をするためには「準備」が大切であり、その準備を活かすのは「日々の努力」なのだと言うことです。

そこを踏まえてようやく本題に入りましょう!

前回は野球というスポーツ特性からみて、多く起こりうる「肩関節の障害」について触れました。今回は肩関節障害と同様に多く起こる「肘関節の障害」について考えてみたいと思います。

ボールを投げるという動作は、人間の機能的な範囲を越えた動作であると私は考えます。
その中でも肩関節と肘関節の動作は屈曲・伸展だけでなく回旋が加わり、重力や進行と反発させる動きが多く含まれています。もちろん全身的にですが、ここでは上肢にスポットを当てます。

肘関節の動きは、屈曲から始まり伸展に進みますがその間でも回旋が加えられ、回旋しながら伸展に進みます。
そしてリリース時は伸展中に逆方向への回旋が行われ、また若干の屈曲を起こします。さらに変化球の種類によっては、回旋をさらに強く行ったり、逆方向への回旋を強く行ったりもします。

時には手関節をロックしたままリリースすることもあり、回旋が少なくても伸展時に自らテンションを高く保つケースもあります。これだけ考えてみても、肘関節には相当なストレスが加えられていることがわかりますよね。

このようにストレスが単発であっても持続させられると、肘頭に変形が起こり骨棘を形成したり、外側上顆に炎症を起こし、これがまた変形を引き起こします。
この変形や骨棘が靭帯や腱を傷つけ、内側側副靭帯損傷を起こしたり軟骨組織の剥離が起こり遊離軟骨を形成したりします。

最悪の場合「手術」によって対処しなくてはならないのです。私自身も遊離軟骨の除去手術を受けた経験があります。こうならないように日々強化とメンテナンスが必要になるのです。
プロ野球選手の場合、残念ながら入団時に多くの選手が何らかの障害を抱えています。

投手の多くはこの「肘関節障害」を抱えたまま入団してきます。我々としては検査をして保存療法でプレーできる可能性を高められるよう対処します。それでも最悪は手術となることも多く経験してきました。

そんな選手たちにできる日々のメンテナンスで重要なことは肘関節のROMを確保することであり、屈曲・伸展・回旋筋群の強化しかありません。
マッサージやストレッチで前腕部、上腕部の筋緊張を緩和させたり、鍼灸治療で同様にアプローチしたりします。

それでもその効果を持続させることが難しいので、私の場合は「円皮鍼」を活用していました。円皮鍼であれば、投球動作中に皮膚の動きを邪魔することなくプレーできるからです。
皮内針は、走行によって皮膚刺激が強く動作中に痛みを感じてしまうので、プレー中にはNGです。

このような方法を用いて、シーズンを乗り切るために日々試行錯誤を繰り返し、選手たちとともに戦ってきたのです。これでも未だに「これで良い」という対処法は見つかっていません。
しかし「もっと良い方法」を考えることが成長を生み「準備」を整えることになると思います。

鍼治療を行う際のポイントは、いかに血流を上げ回復機能を促進させられるか?ということです。
炎症がある場合は抑制を主に行いますが、それでも回復促進という意識を強く持ってアプローチしないと間に合いません。
プロでは毎日のように試合がありますからね。

ですから、このポイントを考え求心性に前腕屈筋群をメインに置鍼し、その後腕橈骨筋や外側上顆に単刺で刺激します。
そして先ほどお話したように、効果の持続を狙い円皮鍼を数か所打ちます。円皮鍼は、その時の状況で筋緊張の強い部位と内側側副靭帯広域に打ちます。

これでおおよその場合、選手自身が不安に感じている部位の不安が軽減され、さらに治療効果の持続を果たせます。実際に選手たちの意見として「施術後に円皮鍼を貼ったことで不安なく、痛みを感じることなく投げられる」という声が多くありました。

まあこれが最善とは言いませんが、こんな方法もあるんだということを覚えてもらえれば幸いです。
皆さんもこれから色々とチャレンジして苦しんで、ちょっとずつ良い方法を見つけ出してください。
こういう「準備」が「結果を生む」ということを忘れないでください!
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